補足資料(2)(ナッツオアエアーモデル)

1.導入
　前回の補足資料ではEV計算について説明しました．今回はナッツオアエアーモデルの均衡戦略を実際に導出してみたいと思います．まずはナッツオアエアーモデルの状況設定を確認しましょう．
以下に計算条件を示す．

IPのハンドレンジ:AA,QQ
OOPのハンドレンジ:KK
ボード:2s2h2d2c3s
POT:1
IP,OOPのエフェクティブスタック:1
ベットサイズ:1

2.OOPの最初のアクション
　結果はみなさんご存じのとおりOOPは必ずチェックするなので，読むのがめんどくさい方はこの記事を飛ばして，補足資料(3)から読んでください.(今回はOOPが必ずチェックすることを証明して終わります．）

まず，OOPの最初のアクションについて考えてみましょう．OOPが取れるアクションはオールインするか，チェックするかのどちらかです．両方のEVを計算してどちらのアクションが正しいか考えてみましょう．
先にOOPがベットする場合のEVを計算していきます．

OOPがベットした場合発生する事象は
AAにコールされて負ける
QQにフォールドされて勝つ
の二通りです．お互いハンドレンジを把握しあっているのでIPはAAをフォールドしたり，QQをコールすることはありません．前と同じようにそれぞれの事象の利益と起こる確率をまとめてみましょう．

AAにコールされて負けるときの利益は-1,それが起こる確率は0.5
QQにフォールドされて勝つときの利益は+1,それが起こる確率は0.5
(IPはAAとQQを同じ割合で持っているので，AAを持っている確率は1/2=0.5,QQを持っている確率は1/2=0.5となります）

つまり，OOPのベットのEVは以下のようになります．

$-1*0.5+1*0.5=0$

よってOOPのベットEVは0となります．次にOOPのチェックEVを考えてみましょう．

OOPがチェックした場合発生する事象は
AAでベットされて，コールして負ける
AAでベットされて，フォールドして負ける
QQでベットされて，コールして勝つ
QQでベットされて，フォールドして負ける
QQでチェックされて勝つ
の五通りです．それぞれの事象の利益と起こる確率を考えてみましょう．しかし，ここで問題が発生します．現時点でOOPはQQでどの程度ベットされているかわかっていません．そこでとりあえずQQでベットされる確率をxとおきます(xは0以上1/2以下の実数です)．

また，五通り全部考えるのはめんどうくさいのでベットされた場合とチェックされた場合の2通りに簡略化して考えます．

チェックされた場合OOPは必ず勝つので，チェックされた時の利益は1です．ベットされた時の利益はわからないのでaとおきます．これらをまとめると，
ベットされるときの利益はaそれが起こる確率は0.5+x
チェックされるときの利益は1それが起こる確率は0.5-x
(IPがQQを持っている確率は0.5なので，そこからベットする確率を引くとQQでチェックする確率を求めることができます．)

OOPのチェックのEVを求めてみましょう．

$a*(0.5+x)+1*(0.5-x)=a(0.5+x)+(0.5-x)$

これだけ見てもなんのこっちゃわからないので，少し考えます．まずxは0以上1/2以下の実数なので0.5-xは明らかに0以上の値です．
次に，aの具体的な値はわかりませんが，IPにベットされたときにOOPが必ずフォールドした場合，aの値は0になります．つまり，aは必ず0以上の数であるということがわかります．(OOPがコールしてマイナスの利益を得る場合，必ずフォールドのほうが利益的だから．）